かつて一斉を風靡した投資バラエティとも呼べるリアリティ番組「¥マネーの虎」。
毎回、参加者と「虎」たちの真剣で迫力のあるやりとりに引き込まれていました。
そして、「経営者ってこんなに真剣に生きているんだ」と
畏敬の念すら感じた人も多いのではないでしょうか。
そんな虎たちを「ロコロール」という新しい食べ物で
虜にしてしまった男性がいました。
美味いものは場の空気を変える
この回に登場した男性は
これまでに、牛角からの依頼で「感動するタレ」を作成し、
大手弁当屋チェーンからの依頼で「わらじカツ」という大きな
カツを乗せる弁当を開発してヒットさせたりと、
輝かしい実績の持ち主で、
プレゼンテーションも非常に自身にあふれていました。
この男性がプレゼンしたのは
「ロコロール」という新しいファーストフードの店を出したい
というものでした。
「ロコロール」というのは
ロコモコを手巻き寿司のような形状にしたもので、
このときはマグロを具に使っていました。
飲食店を経営する虎はかなり興味を示しますが、
他の虎のなかには、
この男性のメンタリティが気に食わないとして反発。
というのも、
この男性はこのプレゼンの時点で
ヘッドハンティングされた会社に勤めだしてまだ4カ月。
それが、投資を受けることができたら
会社を辞めるとあっさり言っちゃうあたりが
人としての義理を欠いているというのです。
このあたりは、ひとそれぞれの考え方ですが、
たしかに経営者からすると
重要な役職の人間が簡単に辞められると
たまったもんじゃありません。
(ですが、この会社もヘッドハンティングしてきたわけですから
辞められても文句言えない気もしますが。)
そんな空気のなか、
ロコロールの試食が始まります。
そして、これがかなり好評で、
試食を拒否していた2人の虎も試食に加わり、
そして絶賛します。
結局、初めから興味を示していた飲食の虎が投資を決断し、
この男性は希望額を獲得します。
あれほど、毛嫌いしていた2人の虎の態度をも一瞬で変える、
美味しいものの力ってほんとうにスゴイです。
ふだんから、できるだけ美味しいものを食べて
機嫌よく保つことの重要性を感じてしまいました。
やはり、自分自身の仕事も、上手く行かせるためには
自分の機嫌を良く保っておくことは非常に重要だと思います。
ビジネスは商品力だけではない
その後この男性は、
場所選びや追加の新メニュー考案などで苦労を重ねますが
なんとか自分のお店をオープンするところまでこぎつけます。
場所は原宿竹下通り。
そしてオープン初日、番組内で設定されたノルマは売上25万円でした。
しかし、思ったように客足が伸びず、
また、店内のオペレーションも上手くいかない部分もあって
不穏な空気が流れ、
イマイチな感じのまま一日が終わってしまいました。
売上は約15万円。
苦い門出となってしまいましたが、
この模様がテレビで放送されると、一気に注目され人気になったそうです。
そして、一年で渋谷、名古屋に新店をオープンさせ
一気に拡大していきました。
順調に見えたロコロールビジネスですが、
実はほどなく終わりを迎えてしまいます。
1号店開店からわずか1年4カ月ほどですでに店はなくなっていました。
男性によると、
渋谷と名古屋の開店にそれぞれ1000万円ほどの資金を投入してしまい、
拡大を急ぎすぎたのが原因だということです。
いくらそれが美味しくても、
だからイコール上手くいくかというとそうではないのがビジネスです。
この男性の場合、1号店のオープン初日で見えた
接客面でのマイナス面が大きかったのかもしれません。
集客、という観点に関しては
あまりにも疎かにしてしまっていたのかもしれません。
どれだけ美味しいものでも、
集客できなければそれを食べてもらうことなどできません。
集客というのは、リアルビジネスであれ、
インターネット上でのビジネスであれ、
常に、もっとも重要な要素のひとつです。
企画・開発は非常に得意なのは分かりましたが、
お客さんと接することに関してはまったく重要視していなかったのかもしれません。
ホントかどうかは分かりませんが、
ロコロールのお店は接客態度が悪かったという声もあるようです。
しかし、テレビなどで放映されることで
一時的にはブームのようにお客さんが集中することはあります。
人はこの「ブーム」が来た時に、冷静でいるのは非常に困難です。
どうしても、このブームが「まだ続く」「まだ続く」と思ってしまうのです。
個人レベルでもそれがいたるところに見られますし、
大きな集団レベルでいうと「バブル景気」などはまさにこれです。
なので、一喜一憂はしてもいいと思うのですが、
ベースとなる「自分はどこへ向かっているのか」という指針を
しっかりと維持し続ける必要があるということだと思います。
新しく生まれた「会社」で、
10年後も生き残っているのは1割もないと言われています。
私の友人に、東京で非常に有名な独立系の
ハンバーガーショップを20年近く経営している人がいるのですが、
このお店、どれだけ人気が出ても、
どれだけ行列ができて売上が上がっても
新しいお客さんに店の存在を知らせるための
ビラ配りやポスティングをスタッフみずからで行うことをやめません。
彼のことを思い出しました。
頭が下がります。
ちなみに、このロコロールの男性、
現在はゲーム・玩具の大手「バンダイナムコゲームス」で役職ある仕事をしているとか。
一生懸命に生きておられる気がします。
周囲に挑戦することの面白さと難しさとを伝えてくださっているのかもしれませんね。
◆企業を願う真剣な魂のぶつかり合い◆
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